為込しこ)” の例文
一体源之助という役者は上方で為込しこんで来た芸をると非常によく、また正確である。であるから大阪で源之助がもう少しまれて来ればよかったと思う。
役者の一生 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
考えれば考えるほど、大変な事になっちまっているわ。何から何まで、わたしはお前さんの通りに為込しこまれてしまっているわ。癖まで同じようにされているわ。なんの事はない。
おごりを極めた食事で、随分時間が長く掛かつた。己達の食卓に就いたのは、周囲の壁に鏡を為込しこんだ円形の大広間であつた。給仕は黒ん坊で、黙つて音もさせずに出たり這入つたりする。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
おれはこんなに丈夫だから、どうもお前よりは長く生きていそうだ。それだから今の内に、こうして陸を為込しこんで置いて、お前に先へ死なれた時、この子を女房代りにするつもりだ。」
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)