激動ショック)” の例文
信一郎は、愛妻に逢う前に、うかして、乱れている自分の心持を、整えようとした。なるべく、穏やかな平静な顔になって、自分の激動ショックを妻に伝染うつすまいとした。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
僕は、河野君にそれとなく話して見ようと思ったのだが、何しろ人事不省に近いことだし、そんな話をして、激動ショックを与えては悪いと思ったから、黙って帰って来たのだ。
神の如く弱し (新字新仮名) / 菊池寛(著)
その時の、僕の受けた激動ショックは今でも幾分かは思い出すことができるのです。僕は、心中という以上、どこかの部屋の中にでも、尋常に倒れているものだと思っていたのです。
島原心中 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
なるべく、穏やかな平静な顔になつて、自分の激動ショックを妻に伝染うつすまいとした。血腥い青年の最期も、出来るならば話すまいとした。それは優しい妻の胸には、鋭すぎる事実だつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
振りかえると母は最愛の娘を襲った変事の為に烈しい激動ショックを受けたらしく、口もろくろく利けないように目をパチパチさせながら、玄関に腰をかけたまま慄え続けて居たようでありました。
ある抗議書 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
見るとその男は思いがけなくも、黒いマスクを掛けて居るのだった。自分はそれを見たときに、ある不愉快な激動ショックを受けずには居られなかった。それと同時に、その男に明かな憎悪を感じた。
マスク (新字新仮名) / 菊池寛(著)