潜然さめざめ)” の例文
おやッと思う中に、その女はスルスルと枕辺まくらもとへ這って来て、どうぞお助け下さい、ご免なすッて下さいと、乱れ髪を畳に摺付けて潜然さめざめと泣く。
お住の霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
潜然さめざめと心が泣きながら、自分で自分に後指さしながら、たゞ目の前の充実を計る。あの人に甘える。さうしてあの人が、私と同じ心持に引下つて来ないといつてふくれる。
脱殻 (新字旧仮名) / 水野仙子(著)
ほんに因果とでもいふものか私が身位かなしい者はあるまいと思ひますとて潜然さめざめとするに、珍らしい事陰気のはなしを聞かせられる、慰めたいにも本末もとすゑをしらぬからはうがつかぬ
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)