はん)” の例文
「や、はんのおじいさんですか。退屈よりも、義兄にいさんや義姉ねえさんに、余りよくしていただくので、なんともはや相すまなくて」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
張鴻業ちょうこうぎょうという人が秦淮しんわいへ行って、はんなにがしの家に寄寓していた。そのへやは河に面したところにあった。
路次の奥から美しい女轎おんなかごがぞろと出て来た。お供は小婢こおんな迎児げいじと、しゅうとはんじいさんとで、二人とも清々すがすがした外出姿よそゆきすがた、常ではない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はんなにがしは漁業に老熟しているので、常にその獲物えものが多かった。ある日、同業者と共に海浜へ出て網を入れると、その重いこと平常に倍し、数人の力をあわせてわずかに引き上げることが出来た。
そして隠居所のはんじいさんを呼び起し、ふた言三言、何かいっていたと思うと、まだ空も暗いのに、役署の方へ行ってしまった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)