漸々ぜん/\)” の例文
然し此姉このあね迄が、いまの自分を、ちゝあにと共謀して、漸々ぜん/\窮地にいざなつてくかと思ふと、流石さすがに此所作しよさをたゞの滑稽として、観察する訳にはかなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
吉田老母は洞谷の母であらう。「廿一日。陰雨いんう。柏子脳痛十八日来漸々ぜん/\緩和に赴く。」「三十一日。晴。吉田老母今日迄逗留之処、今夕より帰宅。」柏の病はえたのである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
すると勝負の上において、所謂いはゆる軍国主義なるものゝ価値は、もう大分だいぶ世界各国に認められたとはなければならない。さうして向後かうご独逸が成功を収めれば収める程、この価値は漸々ぜん/\高まる丈である。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)