漕出こぎい)” の例文
巨勢はぬぎたる夏外套なつがいとうを少女にせて小舟おぶねに乗らせ、われはかい取りて漕出こぎいでぬ。雨は歇みたれど、天なほ曇りたるに、暮色は早く岸のあなたに来ぬ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
暮れゆくそらに心細くなりしわれは、はやかへらむといへど、聴かずして漕出こぎいで、岸辺に添ひてゆくほどに、人げ遠き葦間あしまきたりしが、男は舟をそこにめつ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)