漂浪さすら)” の例文
その上、多くの家庭では、思慮分別のある屈強の人たちは、藩主に従うて上京している。紀州路へ落ちたという噂だけで、今はどこを漂浪さすらっているかわからない。
乱世 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
併し私達は、名所旧蹟を見物するよりも、かうして二人連れで互に身の上話をしながら歩いてゐるのが楽しかつた。孤児みなしごの子供の姉弟きやうだいが知らぬ他郷に漂浪さすらふやうに——。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
何処からともなく漂浪さすらうて来た傀儡師くぐつまはしの肩の上に、生白い華魁おゐらんの首が、カツクカツクと眉を振る物凄さも、何時の間にか人々の記憶から掻き消されるやうに消え失せて、寂しい寂しい冬が来る。
水郷柳河 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しかも帆桁ほげたは朽ち船員は死に絶えても、嵐となぎを越え、七つの海を漂浪さすらい行くと云われるのだが、その身は生とも死ともつかず、永劫えいごうの呪縛にくくられている幽霊船長ファンダーデッケンと——きしみ合う二つの車輪
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
何處からともなく漂浪さすらふて來た傀儡師くぐつまはしの肩の上に、生白い華魁おいらんの首が、カツクカツクと眉を振る物凄さも、何時の間にか人々の記憶から掻き消されるやうに消え失せて、寂しい寂しい冬が來る。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
われは思ふ、かかる夜景に漂浪さすらへる者のうれひを
浅草哀歌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
漂浪さすらひながら
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)