滾滾こんこん)” の例文
静かではあるが、ずっと深いところから滾滾こんこんと湧いて来る感じである。或はとく子一人に対するものではないかも知れない。
澪標 (新字新仮名) / 外村繁(著)
更に登ること少許すこしばかりにして、路傍に小山の如き巨岩がそばだち、右に大残雪があって雪解の水が滾滾こんこんと流れている、それを見ると誰しも一口飲まずには通れない。
白馬岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
失恋の一時ひとときたたずむショパンの右手は、こうして、忘れ果てたあの懐しい情歓を奏でるのだ。滾滾こんこんと絶え間なく流れ落ちる噴き上げの水の中に、華やかな虹色の水滴を転ばせながら。
二十歳のエチュード (新字新仮名) / 原口統三(著)
既ニシテ夕陽林梢ニアリ、落霞飛鳧らっかひふ、垂柳疎松ノ間ニ閃閃せんせんタリ。長流ハ滾滾こんこんトシテ潮ハ満チ石ハ鳴ル。西ニ芙蓉ふようヲ仰ゲバ突兀万仞とっこつばんじん。東ニ波山ヲレバ翠鬟すいかん拭フガ如シ。マタ宇内ノ絶観ナリ。
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
阿弥陀の古銅仏は端然として楞伽窟の遺骸を護って居られるように見える、岩穴から流れ出る水も滾滾こんこんと尽きぬ、手水鉢ちょうずばちは充ちて居る。石燈には老師の自作を毒狼窟どくろうくつの筆で刻み込まれてある。