しず)” の例文
深くはなかったが、その穴のなかでは、二月の雪が底の方からけていた。たった今、雪から水にかえったこまかい粒が、集まってしずくとなった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
その紙がまだ濡れている間に、(だからと云ってしずくのたれているようではこまるのだが)、その一枚をとって、ワクのなかに四十五度にはめられた透明な硝子ガラスの上の本物の札の上におくのである。
“能筆ジム” (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
正面の邦夷は自分の盃をほして、しずくをきって、近習に合図をした。ふり袖をひるがえして座のなかにいざり出たお小姓は、殿の盃を順次に家臣の前に据えるのであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
雨のしずくがおちかかったのだ。はっと我にかえった玉目三郎は、思わず大声に呼びかけた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)