湯烟ゆげ)” の例文
その頃の湯風呂には、旧式の石榴口じゃくろぐちというものがあって、夜などは湯烟ゆげ濛々もうもうとして内は真暗まっくら加之しかもその風呂が高く出来ているので、男女なんにょともに中途の蹈段を登って這入はいる。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
電燈のない時代は勿論、その設備が出来てからでも、地方の電燈は電力が十分でないと見えて、夜の風呂場などは濛々もうもうたる湯烟ゆげにとざされて、人の顔さえもよく見えないくらいである。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)