渡辺橋わたなべばし)” の例文
旧字:渡邊橋
六波羅の軍勢四千と称するものが、尼ヶ崎、神崎、柱松はしらまつのあたりに着き、午ごろにはもう大江の渡辺橋わたなべばし(現今の天満橋てんまばし辺)の北岸にはチラチラ偵察の影などみせていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東より順に大江橋おおえばし渡辺橋わたなべばし田簑橋たみのばし、そして船玉江橋まで来ると、橋の感じがにわかに見すぼらしい。橋のたもとに、ずり落ちたような感じに薄汚うすぎたない大衆喫茶店きっさてん飯屋めしやがある。
馬地獄 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
度をうしなった足利勢は、ただひとすじの退路渡辺橋わたなべばしへ、われがちにどっとしかかったが、馬は狂い、人と人はもつれあい、かき落されて淀川よどがわの激流へけ落ちたものが何百人かしれなかった
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
潰走かいそうする足利の大軍を追いかけ追いかけして、その頃の難波津なにわのつから渡辺橋わたなべばしのあたりまでよせて来たのが十一月の末、二十六日の夜明け方だったという。……ちょうど今夜のように寒かったろう」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)