淡泊あっさり)” の例文
も紅も似合うものを、浅葱だの、白の手絡てがらだの、いつも淡泊あっさりした円髷まるまげで、年紀としは三十を一つ出た。が、二十四五の上には見えない。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし、こんな稼業の者にはめずらしい正直な淡泊あっさりした江戸っ子風の男で、御用をかさに着て弱い者をいじめるなどという悪い噂は、かつて聞えたことがなかった。
半七捕物帳:01 お文の魂 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼はなるべく淡泊あっさりした口上を伝えたかった。したがって小面倒な封書などは使いたくなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
唐桟揃とうざんぞろいの淡泊あっさりづくりに住吉張りの銀煙管おとなしきは、職人らしき侠気きおいの風の言語ものいい挙動そぶりに見えながら毫末すこしも下卑ぬ上品だち、いずれ親方親方と多くのものに立てらるる棟梁株とうりょうかぶとは
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
淡泊あっさりしたことを謂いながら、物足りなそうな、済まぬらしい、愛吉の様子を眺めて、もの優しく
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そんな淡泊あっさりした女じゃない」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)