浮腫むくみ)” の例文
躯はひどく衰弱してみえるが、それは浮腫むくみがとれたからだろう、両後見から誓紙を取る、必ず取ってみせる、という口ぶりには、ねばり強い精気が感じられた。
青白い浮腫むくみがむくみ、あおぐろくま周囲まわりに目立つ充血した眼を不安そうにしょぼつかせて、「ちょっと現下の世相を……」語りに来たにしては、妙にソワソワと落ち着きがない。
世相 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
おまけに、台詞せりふ以外にはどもる癖もあり、かつは永らくの阿片吸飲者でもあって、皮膚にはどこか薄気味悪い——まるで象皮腫のそれのような浮腫むくみが一面に拡がっているのだった。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
いきなり蒲団の裾をまくって足の浮腫むくみをしらべ、首をかしげながらなにかぶつぶついっていたが、そのうちにくりやへ行って、昨日飲みのこした一升瓶をさげてくると、枕元へあぐらをかき
骨仏 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「いや、どうもお世話樣になりやした!」と、朴訥ぼくとつな挨拶を背後に投げて、男は溜息をつきながら自分の兵兒帶へこおびを解きにかかつた。さうして浮腫むくみのあるやうな青ぶくれた赤兒の死骸をその肌に抱いた。
嘘をつく日 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
但し數日來面部に浮腫むくみあり。身體何ともなく疲勞す。
荷風戦後日歴 第一 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
「四月ごろまでは肥えていたのですが、肥えていたのではなく浮腫むくみだそうで、痩せ始めてからは、立ち居も楽になりましたし、病気も快方に向かっているのだと、医者が申しておりました」