洞察力どうさつりょく)” の例文
「実際わし洞察力どうさつりょくを持ってるんだ。のみがちくりとやる場合には、どの女からその蚤がうつってきたか、りっぱに言いあてることができる。」
われわれの洞察力どうさつりょくは、諸君の文化に深く入り込むことはできない。しかし少なくともわれわれは喜んで学ぼうとしている。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
彼らの中の古老は気象学者のまだ知らない空の色、風の息、雲のたたずまい、波のうねりの機微なる兆候に対して尖鋭せんえいな直観的洞察力どうさつりょくをもっている。
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
彼女は愛情から来る洞察力どうさつりょくをもっていて、彼が苦しんでる事柄を推測していた。そしてそれを不安な子どもらしい注意のためにたいへん誇張していた。
しかも自分の不時ふじな招きをうけて、この雪中を物ともせず、早速にやって来た以上、それくらいな洞察力どうさつりょくもない者と観るのは、こちらの見方が甘すぎていたかもしれない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二葉亭の直覚力と洞察力どうさつりょくと政治的批評眼とがなければとても書けないものであった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
どんなに洞察力どうさつりょくのある大河でも、こないだの日曜に恭一と道江とがたずねて来たおり、いっしょに飯を食ったり、わずかの時間話したりしただけで、それができるとは思えなかったのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
彼はこれまでについでながらここにいる一人一人の洞察力どうさつりょく、弱点、気まぐれなどを知っていた。そして、この観点からいうと、これまでここで過ごした時間はけっしてむだではなかったわけだ。
火夫 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
しかし実際この修道院の寄宿舎を出たばかりの少女は、ある微妙な洞察力どうさつりょくをもって話をし、時々真実なみごとな言葉を発した。そのむだ口もみなりっぱな会話となっていた。
そのために、彼の知恵には多少の訴訟癖が加わり、彼の素朴さには多少の洞察力どうさつりょくが加わった。ところが種々な理由で仕事に失敗して、公証人書記から荷車屋となり人夫とまでなり下がった。
民衆の人たる深い洞察力どうさつりょくをもって、われわれが今日|民族観念と呼ぶところのものを心の中にはぐくんでいた。悲憤慷慨こうがいもよくその原因を知悉ちしつした上のことでありたいというので、特に歴史を学んだ。