氷菓アイスクリーム)” の例文
其後私は、誰も彼等に氷菓アイスクリーム菓子ケーキを渡さぬのに気がつき、一人の日本人に手つだって貰って、彼等にそれ等をはこんでやった。
するとベンジンの臭いのするよれよれの燕尾服に身を固めた父親のピョートル・レオンチイッチが寄って来て、桃色の氷菓アイスクリームの皿を差し出した。
私は氷菓アイスクリームを一片舌にのせた。その途端、澄み渡った七月の夜を貫いて、私は何を聞いたろう! 私は、極めて明瞭に男の声を鼓膜から頭脳へききとった。
三鞭酒 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
そして、流血が腫起した周囲を塗って火山型に盛り上り凝結している所は、宛ら桜実さくらんぼうを載せた氷菓アイスクリームそっくりであるが、それ以外には外傷は勿論血痕一つない。
後光殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
川岸かしに上つて、橋袂の氷みせで、しきりに辭退する娘を強ひて氷菓アイスクリームを喰べ、わざと時間を消して宿に歸つた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
毎年まいとし夏の初めに、多くの焼芋屋が俄然がぜんとして氷水屋に変化するとき、第一番にけつけて、汗も出ないのに、氷菓アイスクリームを食うものは誠太郎である。氷菓がないときには、氷水で我慢する。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
毎年まいとしなつの初めに、多くの焼芋やきいも屋が俄然として氷水こほりみづ屋に変化するとき、第一番に馳けつけて、汗も出ないのに、氷菓アイスクリームふものは誠太郎である。氷菓アイスクリームがないときには、氷水こほりみづで我慢する。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)