水滴しずく)” の例文
静子はぜいぜい苦しい呼吸遣いきづかいをしながら、顔や髪に、細かい水滴しずくの垂れて来るのをうるさがる力もないほど、体が弱っていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
窮屈な坑道の荒い岩の肌から水滴しずくがしたゝり落ちている。市三は、刀で斬られるように頸すじを脅かされつゝ奥へ進んだ。彼は親爺に代って運搬夫になった。
土鼠と落盤 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
二人の間にプープーと湯気を吹いているアルミの大薬鑵おおやかんや、外の雪をチラチラと透かしながら一面に水滴しずくをしたたらしている硝子ガラス窓は、二人が長い間話し込んでいる事を証明していた。
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「白い着物からぽたぽた水滴しずくが落ちてたい。」
市三は、岩の破れ目から水滴しずくが雨だれのようにしたゝっているところを全力で通りぬけた。
土鼠と落盤 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)