たふ)” の例文
在るが故によろこぶべきか、きが故にいたむべきか、在る者は積憂の中にき、亡き者は非命のもとたふる。そもそもこのかつとこの死とはいづれあはれみ、孰をかなしまん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
按ずるに当時が備後地方に行はれて、棠軒の家族は皆これに感染し、三郎が独り先づたふれたのではなからうか。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そのたかんなのごとき巌に纏ふこと七巻半、鱗甲りんかふ風にうごき、朱をそゝげる眼は天を睨む、時に鎮西八郎射てこれをたふし、その脊骨数箇を馬に駄す、その馬重きに堪へず、嘶いて進まざりしところ
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)