わざわい)” の例文
ところへ虎に食われた弟子天より降りわざわいを脱れんとならば仏にまいれと教え一同を仏教に化した、話が長いから詳しくここに述べ得ぬ。
その魂のあるとは、もし人の生時に善根をうえず、三宝をしらずして悪をなさざれば、善なくして福を受け、悪なくしてわざわいを受けん。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
かつや恐れ多けれども師団長殿下を始め奉り旅団長参謀佐官を失ふに至りては天の近衛にわざわいする所以ゆえんの者を怪まずんばあらず。
従軍紀事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
それはこの人から慈悲をかけられたものにとつてはその慈悲が一つのわざわいになるだらう事を必然に認めねばならなかつた。
「天が私達にわざわいを降そうとしているのです、救うていただけましょうか」
嬌娜 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
わざわいその身に及ばずんば必ず子孫に発すべきはずである。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
然して威令の行わるる所、既に前にて後に仰ぎ、聡明の及ぶ所、反って小を察して大をわする。貧者は獄に入りてわざわいを受け、富者は経を転じて罪を免る、これ傷弓しょうきゅうの鳥を取り、つね呑舟どんしゅうの魚を漏す。
令狐生冥夢録 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)