死屍累々ししるいるい)” の例文
それも見るまに黒けむりとなり、真紅の群炎ぐんえんとなった。そして、吹き狂う熱風は、早くも死屍累々ししるいるいの惨を地に照らし出している。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
濛々もうもう淡黄色たんこうしよくを帯びた毒瓦斯が、霧のように渦を巻いて、路上一杯にってゆく。死屍累々ししるいるい酸鼻さんびきわめた街頭が、ボッと赤く照しだされた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
死屍累々ししるいるいとはあの事ですね。それがみんな夫婦なんだから実際気の毒ですよ。つまりあすこを二三丁通るうちに、我々は悲劇にいくつ出逢うか分らないんです。それを考えると御互は実に幸福でさあ。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「やるな」と、大将の危機と見て、公孫瓚の旗下、侍大将など、幾人となく、彼に当り、また幾重となく、文醜をつつんだが、みな蹴ちらされて、死屍累々ししるいるいの惨状を呈した。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのはやさは、まだ死屍累々ししるいるいなぎさに洗われている姉川を、夜々けわたる時鳥ほととぎすにも似ていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)