歌留多カルタ)” の例文
二階には畳が敷いてあった。正月の寒い晩、歌留多カルタに招かれた彼は、そのうちの一間で暖たかい宵を笑い声のうちふかした記憶もあった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その二日目の十五日の夜に、麹町谷町の北側、すなわち今日の下二番町の高原織衛という旗本の屋敷で、歌留多カルタの会が催された。
妖婆 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
落語に、商家の子息が発句ほっくに凝って締出しをくう、と、向うの家の娘も歌留多カルタの集りで遅くなって家へはいれない。
藤村先生にいろは歌留多カルタがあるだろ。その中に、さ、里芋の山盛り、というのがある。つまり、これだね。これは薩摩芋だけどまあ同じようなものだ。
メフィスト (新字新仮名) / 小山清(著)
「出やしません。日が暮れるとお稽古がなくなったから、早御飯にして、和助さんと無駄話をしたり、ウンスン歌留多カルタをやったり、亥刻よつ(十時)前に寝てしまいましたよ」
もしそれ夜に入っての歌留多カルタ遊びに至っては花の色の移ろうを知らざる若き男おんなの罪のない争い、やがてはそれも罪つくるよすがにとはなるべきも、当座はただ慾も苦もない華やかなさざめき
残されたる江戸 (新字新仮名) / 柴田流星(著)
いよいよ鮮かに何の屈托くったくもない様子で、歌留多カルタの札を配っている。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
歌留多カルタとる声にとどめて老の杖
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)