櫛匣くしげ)” の例文
さなきだに、そこの、古女御所ふるにょごしょは冷え冷えしていた。明り窓にはクモの巣が見え、小机、櫛匣くしげなどの調度も、何代前の女人の用具やらと思われて肌さむい。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが、やがて泣きやむと、波路はするすると千鳥棚の下へ寄ってゆき、コトリと、櫛匣くしげの蓋をとっている。上目づかいで、良人が見ているなどは、おそらく意識の外だったろう。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
櫛匣くしげをおき、鏡にむこうておられたのを、なかば捲かれた御簾みすごしに見たのだが……
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
常磐は、鏡をたたみ、櫛匣くしげを仕舞って、乳呑みと、ふたりの児を、両側にひき寄せ
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、几帳きちょうを立てて、そこにある櫛匣くしげを寄せ、牛若を抱いたまま、化粧をしていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)