“楔子(せっし)” の例文
彼の出で来(きた)る、継嗣論その楔子(せっし)たる疑うまでもなし。当時位(くらい)を極(きわ)め、驕(おご)りを極め、徳川の隆運を極めたる家斉(いえなり)の孫家定、将軍の位に在(あ)り。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
更紗(さらさ)の衣裳の下から見える前足の蹠(あしのうら)がうす赤い。——この鼠が、これから雑劇の所謂(いわゆる)楔子(せっし)を演じようと云う役者なのである。
仙人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
然(しか)れどもその六月において、幕府が米国との仮条約に調印したる事実を知らば、この事実の如何に松陰が幕府に対する思想に向って変化の楔子(せっし)となりたるかは、固(もと)より多弁を俟(ま)たざるなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)