なぎ)” の例文
熊野詣くまのもうでには、なぎの木を折って、髪やかぶりにかざして帰る風俗があるから、ここでも杉の葉をそうするような風習があったのだろうか。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むかしは熊野のなぎは全国に聞こえ渡れる名木で、その葉をいかに強くくも切れず、おっとに離れぬ守りに日本中の婦女が便宜してその葉を求め鏡の裏に保存し
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
なぎの葉にふる雨見ればしらしらとふふ馬酔木あしびも夜の目には見ゆ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
笈摺おいずりをかけて涼しやなぎの枝 自笑
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
湯が出ないうちにもう佐佐木信綱博士から“なぎの湯”と名づけられたと宮司がいう。宝物類なども展示されたが、ここも古く火災にあっているので多くは伝写である。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
熊野をひきあいに出したのは、なぎの大木を見たからである。新宮のはおおきくないが、ここのは喬木であり、四、五幹もそそり立っている。古典にも見えるが元来、南方系の樹木ではないかとおもう。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)