桝田屋ますだや)” の例文
馬籠まごめ宿しゅくで初めて酒を造ったのは、伏見屋でなくて、桝田屋ますだやであった。そこの初代と二代目の主人、惣右衛門そうえもん親子のものであった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
半蔵さん、脇本陣わきほんじん桝田屋ますだやへ来て休んで行った別当はなんと言ったと思います。御召馬とはなんだ。そういうことを言うんですよ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
問屋といや九太夫くだゆうをはじめ、桝田屋ますだやの儀助、蓬莱屋ほうらいやの新七、梅屋の与次衛門よじえもん、いずれもかみしも着用に雨傘あまがさをさしかけて松雲の一行を迎えた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あるいは岩村の御用達ごようたしからも借り入れたもので、その中には馬籠の桝田屋ますだやの主人や上の伏見屋の金兵衛が立て替えたものもある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
七里役(飛脚)の置いて行く行幸のうわさなぞを持ち寄って、和宮様御降嫁当時のこの街道での大混雑に思い比べるのは桝田屋ますだやの小左衛門だ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
桝田屋ますだやと伏見屋との二軒の門口には、白米一升につき六百文で売り渡せとの文句を張り札にして、夜中にそれをはりつけて行くものさえあらわれる。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
梅屋の子供が長州、桝田屋ますだやの子供が薩摩さつま、それから出店でみせ(桝田屋分家)の子供が土佐とかで、みんな戦ごっこです。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その声は桝田屋ますだやおよび出店でみせをはじめ、蓬莱屋ほうらいや、梅屋、その他の分家に当たる馬籠町内の旦那衆の中から出、二十五軒あるふるい御伝馬役の中からも出た。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
吉左衛門はじめ、金兵衛らはこの労苦をねぎらい、問屋の九太夫はまた桝田屋ますだやの儀助らと共にその間をはしり回って、隣宿妻籠までの継立てのことを斡旋あっせんした。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
井の平畠は桝田屋ますだやへ、寺の上畠は伏見屋へ、陣場掲示場跡は戸長役場へというふうに。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
桝田屋ますだやからは何を祝ってくれ、蓬莱屋ほうらいやからも何を祝ってくれたというたびに、めずらしいもの好きの弟たちまで大はしゃぎだ。しかし、かんじんのお粂はどうかすると寝たりなぞする。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それにはわき本陣桝田屋ますだや方こそ、二代目惣右衛門そうえもんのような名古屋地方にまで知られた町人の残した家のあとであるから、今の住居すまいは先年の馬籠の大火に焼けかわったものであるにしても
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)