柳浪りゅうろう)” の例文
水蔭すいいん乙羽おとわ柳浪りゅうろうやその他の面々は硯友社の旗幟きしが振ってから後に加盟したので、各々一、二年乃至数年遅れていた。
そして柳浪りゅうろう、天外、風葉等の作者の新作にも注意し、又、後進のものの成長をも見まもっていてくれたろうと思う。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
例えば尾崎紅葉の『不言不語』とか広津柳浪りゅうろうの『河内屋』とか、幸田露伴の『五重塔』に夢中になり、『水滸伝』や『南総里見八犬伝』に寝食を忘れたのは
露伴の「雲のそで」、紅葉こうようの「多情多恨」、柳浪りゅうろうの「今戸心中いまどしんじゅう」あたりが書かれたころに当るはずである。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
我が師柳浪りゅうろう先生移居の癖あり。曽て言えらく小説家は折ある毎に家をうつすべし。家を遷せば近隣目新しく近隣目新しければ従って観察の興を催し述作の資料を得る事すくなからずと。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
天外子が『楊弓場ようきゅうばの一時間』は好箇の写生文なり。『今戸心中いまどしんじゅう』と『浅瀬の波』に明治時代の二遊里を写せし柳浪りゅうろう先生のかつて一度ひとたびも筆をこの地につけたる事なきはむしろ奇なりといふべくや。
葡萄棚 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
これが後日わたくしをして柳浪りゅうろう先生の門に遊ばしめた原因である。
正宗谷崎両氏の批評に答う (新字新仮名) / 永井荷風(著)