板木ばんぎ)” の例文
そして、田沼先生のあとについて広間を出ると、すぐ板木ばんぎを鳴らしたが、その眼は何かを一心に考えつめているかのようであった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
村では鐘を鳴らし、板木ばんぎを叩き、一大事でもわき起ったような騒ぎである。女子供も出てくるし、鶏も羽バタキ、羊もさけび、豚もく。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三時間目の板木ばんぎが鳴るとともに行進曲にかわり、みんなの足どりをひとりでに浮き立たせて、しぜんに教室へみちびいていた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
たとえば学校へ参りましても、教員室の机にかかりながら、ぼんやり何かに思い耽って、授業の開始を知らせる板木ばんぎの音さえ、聞き落してしまうような事が度々あるのでございます。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「では、約一時間たったら、また板木ばんぎを鳴らしますから、ここに集まって下さい。それまでは自由に探検を願います。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
始業を報じる板木ばんぎが鳴りひびいて、大石先生はおどろいて我れにかえった。ここでは最高の四年生の級長きゅうちょう昨日きのうえらばれたばかりの男の子が、背のびをして板木ばんぎをたたいていた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
自身番から板木ばんぎが廻る。ドーン、ドーンと、裏通りを打ってくる番太郎の太鼓らせ。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それでも、七時になると、かれは元気よく立ちあがって、廊下ろうか板木ばんぎを打ち、そのまま広間にはいって行った。夜の懇談会がはじまる時刻だったのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
小さい時から荒い声も出さずに育てられたいねではあったが、これだけの世帯を切り回しているうちに気性も変り、事あるごとに板木ばんぎのように、大声で呶鳴どなりつけた。笑うのも叱るのも大声であった。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
始業の板木ばんぎが鳴りわたり、いよいよ今日の勉強もはじまるわけだ。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)