杢兵衛もくべえ)” の例文
元来田舎者のぼんやり者だが、近来ます/\杢兵衛もくべえ太五作式になったことを自覚する。先日上野を歩いて居たら、車夫くるまやが御案内しましょうか、と来た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「御冗談じゃございません、おれの行くところはどこだと交番でお聞きになるは、篠山ささやま杢兵衛もくべえさんに限ったものです、あなた様などの御身分で、めっそうもない」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
杢兵衛もくべえです」と老人が簡単に説明した。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先刻さっき杢兵衛もくべえさんの言った通りだ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
何かは知らず滅多めった無性むしょうせわしそうだ。斯様こんうずの中にまれると、杢兵衛もくべえ太五作たごさくも足の下が妙にこそばゆくなって、宛無あてなしの電話でもかけ、要もないに電車に飛び乗りでもせねばまぬ気になる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)