朽樹くちき)” の例文
山の草、朽樹くちきなどにこそ、あるべき茸が、人のすまう屋敷に、所嫌わず生出はえいづるを忌み悩み、ここに、法力のげんなる山伏に、祈祷きとうを頼もうと、橋がかりに向って呼掛けた。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
心を冷たく打ちひしぎ、まるで枯れ尽したすげか、荒壁を思わす朽樹くちきの肌でも見るかのような、妙にうらさびれた——まったく見ていると、その暗い情感が、ひしと心にのしかかってくるのだった。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)