本所ほんじょう)” の例文
浪島文治が本所ほんじょう業平橋に居りましたゆえに人綽名あだなして業平文治と申しましたとも云い、又男がいから業平文治と申したとも仰しゃる方があります。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ええ、ええ、『本所ほんじょうに蚊がなくなれば大晦日おおみそか』と云うが、ここのはやぶなんだからなかなか本所どころじゃあない。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
最初のうちは本所ほんじょう四ツ目の大坂屋という店へ半月以上もつづけて来たが、その後ばったりと来なくなった。
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
万延元年六月の末頃から本所ほんじょう竪川たてかわ通りを中心として、その附近にたくさんの白い蝶が群がって来た。
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
其の頃の落首らくしゅに「本所ほんじょうに過ぎたるものが二つあり津軽大名炭屋鹽原」と歌にまでうたわれまして、十万石のお大名様と一緒にたとえられます位になる其の起源おこりは、わずかの端銭はしたぜにから取立てまして
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
本所ほんじょうの方から出て来るおたきという若い夜鷹は、ふた晩ほど其の女にすれ違ったが、なんとも云えない一種の物すごさを感じて、その以来は自分のかせぎ場所をえる事にしたというのである。
半七捕物帳:43 柳原堤の女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そうなると、ここに長居も出来ない。おまけに老人はこれから本所ほんじょうの知人を尋ねると云うので、一緒に付いてゆくことも出来ない。残念ながら髪切りの話はここでひと先ず中止のほかは無かった。