木鼠きねずみ)” の例文
見ろ、あれで力のあることが大したものなんだ、身体のこなしの敏捷すばしっこいことと言ったら木鼠きねずみのようなもので、槍をつかわせては日本一だ
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その多くの汚い眼の中に、壁の際の、そこには、木鼠きねずみ生皮いきがわが竹釘で打付けてある、その上部の穴からして、ジッとこちらを凝視している一つの眼。
壁の眼の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
が——その幾ツもの目が、水車小屋の蔭にハッとして動いた影を見つける前に、石尊詣せきそんまいりの例の男は、木鼠きねずみのごとく一方の森へ駆け込んでおります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まず彼女は、白繻子しろじゅすの訪問服の上から木鼠きねずみの毛皮外套を着て、そして、スキイをいた。帽子には、驚くべきアネモネのぬいとりがあった。耳環みみわ真珠の母マザア・オヴ・パアルの心臓形だった。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
其のそばの欄間に石版画の額が掛けてありますが、葡萄ぶどう木鼠きねずみで何も面白い物がありません、何か有ったら褒めよう/\と思って床の間の前を見た処が古銅こどうの置物というわけでもなし
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「そりゃ木鼠きねずみも木から落っこちることがある、転んだところで怪我さえしなけりゃなあ」
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「悪党だって、絵の上手なのも居るし、家で盆栽ぼんさいをいじっている奴もある。現に、木鼠きねずみの三公なんかは、巾着切きんちゃくきりは下手へただが、伝馬牢へ入ると、時々、句を作って出てくるそうだ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)