曲直きょくちょく)” の例文
この好き嫌いをもって物を判断する標準にすると、とかく曲直きょくちょく分別ふんべつができなくなり、つまらぬことに争い、大きなことにも争いを起こす。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
いかに人の見ていぬ場所でも、猫と座席争いをしたとあってはいささか人間の威厳に関する。真面目に猫を相手にして曲直きょくちょくを争うのはいかにも大人気おとなげない。滑稽である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
怪刀の柄ざわりが、ぐんぐん胸をつきあげてきて、理非曲直きょくちょくは第二に、いまは生き血の香さえかげばいい丹下左膳、右頬の剣創けんそうをひきゆがめて白い唇が蛇鱗だりんのようにわななく……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
子供が事柄ことがらについて判断を下すを見るに、事の曲直きょくちょく、物の善悪をそのままに見ることはほとんどなく、たいがい頭から好ききらいという立場から判断する。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
線の曲直きょくちょくがこの気合の幾分を表現して、全体の配置がこの風韻ふういんのどれほどかを伝えるならば、形にあらわれたものは、牛であれ馬であれ、ないしは牛でも馬でも、何でもないものであれ、いとわない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかして男子としてむべきはこの種のゆうを有したからで、国がやや進歩し、法律をもって善悪曲直きょくちょく判別はんべつする時代にいたっても、依然としてなお匹夫ひっぷゆうとうとばれ
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)