暢然ゆつたり)” の例文
旅人は、どうやら少し暢然ゆつたりした樣な心持で、目の前の、痩せ果てた骨と皮ばかりの赤犬を、憐む樣な氣になつて來た。で手を伸べて犬を引寄せた。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
五間幅の往還、くわツくわと照る夏の日に、短く刈込んだ頭に帽子も冠らず、腹を前に突出して、懐手ふところで暢然ゆつたりと歩く。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
日比谷公園を出て少許すこし來ると、十間許り前を暢然ゆつたりとした歩調あしどりで二人連の男女が歩いてゐる。餘り若い人達ではないらしいが何方も立派な洋裝で、肩と肩を擦合して行くではないか、畜生奴!
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
三分心の置洋燈を細めて、枕に就くと、氣が少し暢然ゆつたりした。お八重さんももう寢たらうかと、又しても友の上を思出して、手を伸べて掛蒲團を引張ると、何となくフワリとして綿が柔かい。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
三分心の置洋燈を細めて、枕に就くと、気が少し暢然ゆつたりした。お八重さんももう寝たらうかと、又しても友の上を思出して、手を伸べて掛蒲団を引張ると、何となくフワリとして綿が柔かい。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
暢然ゆつたり歩いたり、急いで歩いたり、電車にも乘つたし、見た事のない、狹い横町にも入つた。車夫にも怒鳴られたし、ミルクホールの中を覗いても見た。一町ばかりいきな女の跟をつけても見た。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)