春闌はるた)” の例文
ときどき、羅刹谷らせつだにの奥まったところで、平家琵琶のかなでを独りほしいままにして、都の焦土も、千早金剛のあらしも、いや春闌はるたけて来た山の色の移りも知らぬかのような者がいた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いちいち、手順までいいつけてから、道誉はたちの奥へ消えこんだ。——東海、鎌倉はもう薄暑はくしょの候だが、伊吹のすそはようやく春闌はるたけたみどりの深みに駒鳥の高音たかねがやや肌さむいほどだった。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)