日蔽ひおおい)” の例文
日蔽ひおおい葭簀よしずはさんざんに破れている。萩のしだれた池の水は土のように濁っている。向日葵も鳳仙花も鶏頭もみんな濡れて倒れていた。
写況雑記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
日蔽ひおおい葭簀よしずを払った、両側の組柱は、鉄橋の木賃に似て、男もおんなも、折から市人いちびと服装なりは皆黒いのに、一ツ鮮麗あざやかく美人の姿のために、さながら、市松障子の屋台した
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日蔽ひおおいが出来て暗さと静かさと
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
日蔽ひおおいに隠れし処へ、人形室の戸を開きて、得三、高田、老婆お録、三人の者入来いりきたりぬ、程好き処に座を占めて、お録はたずさえ来りたる酒とさかな置排おきならべ、大洋燈おおランプに取替えたれば
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こは六畳ばかりの座敷にて一方に日蔽ひおおいの幕を垂れたり。三方に壁を塗りて、六尺の開戸ひらきどあり。床の間は一間の板敷なるが懸軸も無く花瓶も無し。ただ床の中央に他にたぐい無き置物ありけり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
垂れ下したる日蔽ひおおいは、これ究竟くっきょう隠所かくれどころと、泰助は雨戸とその幕の間に、いなずまのごとく身を隠しつ。と見れば正面の板床に、世に希有めずらしき人形あり。人形の前に坐りたる、十七八の美人ありけり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)