擦過傷さっかしょう)” の例文
暗い溝崖みぞがけで、したたか奔馬の背から振り落され、右の肩を打ち、右額みぎびたいへも、大きな擦過傷さっかしょうを負ったうえに、念入りに風邪までひきこんでしまったのだ。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
更に又、屍体の所々——両方のてのひら、肩、下顎部、ひじ等の露出個所には、無数の軽い擦過傷さっかしょうが痛々しく残り、タオル地の寝巻にも二、三のほころびが認められた。
デパートの絞刑吏 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
養子は手足に少し擦過傷さっかしょうを受けていたが、それも大した事はなく、乙子は異常な恐怖に病的におびえて貧血していたけれど、着物の裾が裂けているばかりだった。
九月一日 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
ただし三人の住所は近所ではなくバラバラであった。第三に三人の屍体は同様の打撲傷だぼくしょう擦過傷さっかしょうおおわれていたが、別にピストルを射ちこんだ跡もなければ、刃物はものえぐった様子もない。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
深い擦過傷さっかしょうが、幾つも幾つも遠慮なく付いている。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)