拈華微笑ねんげみしょう)” の例文
決断がにぶいといったものもあるが、彼れらは決して拈華微笑ねんげみしょう、死を悦びはしなかったのだ。出来ることならば生のよろこびを祈ったのだ。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
技術上微笑したようなお顔になっているけれども、拈華微笑ねんげみしょうの教義による微笑の意義を目指して拵えたという説があるようだが、私にはそうはとれない。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
今こそこの赫々かっかくとしたほのおの下に、死にひんした法月弦之丞の姿を見るのだ——といううなずき合いの眼、拈華微笑ねんげみしょうだ。三位卿もただちょっとあごを下へ動かしたばかり
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
拈華微笑ねんげみしょう」の昔はもちろん、百数十行にわたる新聞記事さえ他人の気もちと応じない時にはとうてい合点がてんのできるものではない。「彼」の言葉を理解するものはいつも「第二の彼」であろう。
十本の針 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
拈華微笑ねんげみしょう的微笑もおのずと口辺に漂わざるを得ません。だって、そうではないの、同じスポーツの用語を問いの形で出されることがあるだろうと、優雅なますらおは予想していたでしょうか。
鼻下の微髯をヒレ酒の露にぬらして、拈華微笑ねんげみしょう的なふくみクボを大幅な顔にたたえるところ、たれかが「無尽会社の社長さん」と敬称したのをぼくも初めはほんとにしていた程である。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)