戦野せんや)” の例文
夜の戦野せんやから拾ッて来たと称して、物見組の一将校が、二人のかよわい者を連れ、おそるおそる尊氏の陣幕とばりへそれを告げに来ていた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これらの女性が世路せいろに耐えてきたたたかいも、戦野せんやの男どもに劣るものでなく、しかもこんな弱い群れは、武門という武門や公卿の深窓からもみな“時の波”にただよい出されて
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「宋先生、毎度毎度、出勢しゅつぜいの日には、あなたにばかり戦野せんやのご苦労をわずらわしてきた。しかしこんどこそは、この晁蓋が陣頭に立ってゆきます。どうか今回は留守をおねがい申す」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここでも尊氏は、実の親を怨む子を戦野せんやに捕えねばならない破目になっていた。尊氏は、直冬をとらえて、出家を命じようぐらいな考えでいたのだが、叛逆の子は猛って親の軍へさんざんにあらがッた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)