懵乎ぼうつ)” の例文
氣が拔けた樣に懵乎ぼうつとして編輯局に入ると、主筆と竹山と、モ一人の洋服を着た見知らぬ男が、煖爐ストーブを取圍いて、竹山が何か調子よく話して居た。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
気が抜けた様に懵乎ぼうつとして編輯局に入ると、主筆と竹山と、モ一人の洋服を着た見知らぬ男が、暖炉を取囲とりまいて、竹山が何か調子よく話して居た。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
頭腦あたま懵乎ぼうつとしてゐて、これといふ考へも浮ばぬ。話も興がない。耳の底には、まだ轟々たる都の轟きが鳴つてゐる。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
頭脳あたま懵乎ぼうつとしてゐて、これといふ考へも浮ばぬ。話も興がない。耳の底には、まだ轟々たる都の轟きが鳴つてゐる。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
渠は遽かに膝を立直して腕組をしたが、懵乎ぼうつとした頭脳あたまを何かしら頻りに突つく。暫し無言で居た梅野が、「お酌しませうか。」と云つて白い手を動かした時、野村の頭脳に火の様な風が起つた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
懵乎ぼうつとして目を開くと、無際限の世界が唯モウ薄光の射した淡紅色ときいろの世界で、凝として居ると遙か遙か向うにポッチリと黒い點、千里の空に鷲が一羽、と思ふと、段々近づいて來て、大きくなつて
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
渠は遽かに膝を立直して腕組をしたが、懵乎ぼうつとした頭腦を何かしら頻りに突つく。暫し無言で居た梅野が、「お酌をしませうか。」と云つて白い手を動かした時、野村の頭腦に火の樣な風が起つた。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
懵乎ぼうつとして目をくと、無際限の世界が、唯モウ薄光うすあかりの射した淡紅色の世界で、じつとして居ると遙か/\向ふにポツチリと黒い点、千里の空に鷲が一羽、と思ふと、段々近いて来て、大きくなつて
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)