懐都合ふところつごう)” の例文
それさえ彼は懐都合ふところつごうで見合せなければならなかったのである。まして京都から多少の融通をあおいで、彼らの経済に幾分の潤沢うるおいをつけてやろうなどという親切気はてんで起らなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「それもこのごろでは張合いがないわい、甲府の女どもにまで懐都合ふところつごう見透みすかされるようなこわもてで、騒いでみたところがはじまらない、やっぱり貴様のかおを見ながら飲んでいる方がよい」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
骨董こっとうも好きであるが所謂いわゆる骨董いじりではない。第一金が許さぬ。自分の懐都合ふところつごうのいい物を集めるので、智識は悉無しつむである。どこの産だとか、時価はどの位だとか、そんな事は一切知らぬ。