憂暗ゆうあん)” の例文
戦いつかれた軍は、ただまっ黒になって、将士みな口をむすんだまま憂暗ゆうあんな顔をもって、小牧山へ帰って来た。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お綱は自分のつつしみを破って、ふと弦之丞を憂暗ゆうあんにさせたことをすまなく思った。もとより、この人とお千絵様とは、切る、捨てる、ことのならない仲なのである。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのたびごとに、門人たちは、沼のような憂暗ゆうあんにかえった。或る者は、舌うちを鳴らし、或る者は、そばの者に聞えるような嘆息ためいきをし、忌々いまいましげな眼を、夕闇の中に、ぎらぎらさせていた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一日とて、憂暗ゆうあんなおひとみの清々と晴れていたことはない。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の憂暗ゆうあんとなるものではなかった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)