慨嘆がいたん)” の例文
三河武士と貧乏とは、いかなる宿縁ぞや——などとよく若いさむらいは冗談に慨嘆がいたんするが、実際、今もってそれは救われていなかった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主僧はそれと心を定めたらしく、やがて、「人間というものはいつ死ぬかわかりませんな」と慨嘆がいたんして
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
西洋の狸から直伝じきでんに輸入致した術を催眠法とかとなえ、これを応用する連中を先生などとあがめるのは全く西洋心酔の結果で拙などはひそかに慨嘆がいたんいたりえんくらいのものでげす。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は如何いかにも慨嘆がいたんに堪えない、というような顔色をみせた。そして
自殺 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
慨嘆がいたんして、現在のような中老の先生ばかり採用することにした。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と、なんら明察のびんもないその凡人なみな感じ方や赤橋守時の処置ぶりなど見て、ひそかな慨嘆がいたんを胸につつむらしい不平顔もかなり目立った。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と清三は慨嘆がいたんして
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
いまよりはまだ健康な世代といわれる寛永から万治までの世を知っていないかれらには、前期との比較がないので、慨嘆がいたんもなく、煩悶もせず、易々やすやすと、自堕落な世に同調してゆけるのもある。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)