感傷的センチメンタル)” の例文
寄るとさはるとたゞ騒々しく女の美しさばかりを讚へてゐて、悶々としたり、感傷的センチメンタルになつたりして堂々廻りをしてゐるなんて、一体、諸君!
まぼろし (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
僕は彼女を急に感傷的センチメンタルに思ひ出す。僕には彼女の心臟が硬いのか、脆いのか、分らなくなる。
不器用な天使 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
こうかもどろかオロラの下へ——という感傷的センチメンタルな声は市井しせいはてから田舎人の訛声だみごえにまで唄われるようになった。そして最後にカルメンの悲しい唄声を残して彼女はった。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
恋愛に関して非常に感傷的センチメンタルになつてゐると私には思はれる。婦人が殊に甚しいやうである。
其処に立っていますと、妙に感傷的センチメンタルになって思いは過去へ過去へと馳せて行くのでした。
「奈良」に遊びて (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
感傷的センチメンタルな気分に支配されやすいくせに、彼は決して外表的デモンストラチーヴになれない男であった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
激しい飛び散るような、その詩を聞いていると、私一人が飢えるとか飢えないとかの問題が、まるで子供の一文菓子のようにロマンチックで、感傷的センチメンタルで、私は私の食慾を嘲笑したくなった。
放浪記(初出) (新字新仮名) / 林芙美子(著)
自分があまり感傷的センチメンタルなのが不愉快になってきた。
キャラコさん:03 蘆と木笛 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「どうせもういらないんですもの。——一寸面白いですよ、可成感傷的センチメンタルなものですが。」
眠い一日 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
それには無論養家を出る出ないの蒼蠅うるさい問題も手伝っていたでしょう。彼は段々感傷的センチメンタルになって来たのです。時によると、自分だけが世の中の不幸を一人で背負しょって立っているような事をいいます。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)