悪狡わるがしこ)” の例文
旧字:惡狡
乱世の間を、こういうふうに、押し太く、悪狡わるがしこく、上手に生きぬいて来たつもりであった松永久秀ひさひでも、たった一つ、大きな過誤を犯してしまった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはちょうど、悪狡わるがしこい獣が耳を垂れ、相手が近づくのを待ち構えているようであった。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
勿論それによって、ピロカルピンの服用も、一場の悪狡わるがしこい絵狂言であることが判明した。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それは、信者の催眠中、らいに似た感覚を暗示する事で、それがために、白羽の矢を立てられた信者は、身も世もあらぬ恐怖に駆られるが、そこが、教主くらの悪狡わるがしこいつけ目だった。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
相変らず白っぽいかすみのかかったような、それでいて、その顔の見えない方の側には、悪狡わるがしこい片眼でも動いていそうな……という、いつも見る茫漠ぼうばくとした薄気味悪さで、またそれには
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)