)” の例文
そこで早くを失った終吉さんは伯母おばをたよって往来ゆききをしていても、勝久さんと保さんとはいつとなく疎遠になって、勝久さんは久しく弟の住所をだに知らずにいたそうである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
わたくしは嘗て懐之がを喪つた後久しからずして下谷徒町かちまちに隠居し、湯島の店を養子三右衛門に譲り、三右衛門が離別せられた後、重て店主人てんしゆじんとなつたことがあると聞いてゐる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
榛軒の弟柏軒はくけん、通称磐安ばんあんは文化七年に生れた。うしなった時、兄は二十六歳、弟は二十歳であった。抽斎は柏軒を愛して、おのれの弟の如くに待遇した。柏軒は狩谷棭斎のむすめたかめとった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
抽斎の友森枳園きえんが佐々木氏かつを娶って、始めて家庭を作ったのも天保四年で、抽斎が弘前に往った時である。これより先枳園は文政四年にを喪って、十五歳で形式的の家督相続をなした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)