御者台ぎょしゃだい)” の例文
御者台ぎょしゃだいを背中に背負しょってる手代は、位地いちの関係から少しも風を受けないので、このぐさは何となく小賢こざかしく津田の耳に響いた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで、オンドリは御者台ぎょしゃだいにすわって、御者になりすましました。さてそれから、オンドリはものすごいいきおいで、車をすっとばしていきました。
キシさんは御者台ぎょしゃだいに上りました。馬は走りだしました。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
余は寝ながらほろを打つ雨の音を聞いた。そうして、御者台ぎょしゃだいと幌の間に見える窮屈な空間から、大きな岩や、松や、水の断片をありがたく拝した。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は首を曲げて御者台ぎょしゃだいすみし込んである赤い小旗を見た。暗いので中に染め抜かれた文字は津田の眼に入らなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
前に客待の御者ぎょしゃが一人いる。御者台ぎょしゃだいから、この有様を眺めていたと見えて、自分が帽子から手を離して、姿勢を正すや否や、人指指ひとさしゆびたてに立てた。乗らないかと云う符徴ふちょうである。自分は乗らなかった。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)