御差支おさしつかえ)” の例文
「まァまァお待ち下さりませ。何やら御様子ありげの今のお言葉、とにかくその仔細を、御差支おさしつかえ無い限りは、手前どもにお聴かしの程願いまする」
備前天一坊 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「御修業はさること乍ら、若くて美しいお方が、う行い浄めて居られるのは、深い仔細が無くては叶いません。御差支おさしつかえが無かったらお話し下さい——」
百唇の譜 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
御差支おさしつかえさえなければ、おついでに一本書いていただいてもよろしゅうございます」と敬太郎も冗談じょうだん半分に頼んだ。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ドウも争と云う字が御差支おさしつかえならば、外に飜訳ほんやくの致しようもないから、丸でれは削りましょうといって、競争の文字を真黒に消して目録書を渡したことがある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「ふとすると失礼致すかも知れません。あしからず。」綾子はあやしみ、「何ぞ御差支おさしつかえがございますか。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なるべく新しい方もそれぞれ訪問する訳になりましたので——そこで実はちょっと往って来てくれと頼まれて来たのですが、御差支おさしつかえがなければ、御話を筆記して参りたいと思います
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)