従而したがつて)” の例文
旧字:從而
従而したがつて戦争を「死の絶望」に関してのみ見る限り、決死隊をのぞいては、進む兵士は必ずしも戦争を、死を、見てゐるとは限らない。
死と鼻唄 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
備ふるか否かは余の知らざる所従而したがつてその説く所の果して首肯すべきか否かは暫く論ぜず。
史論の流行 (新字旧仮名) / 津田左右吉(著)
従而したがつてその野心のあらはれも逞しいから、小説だけでこと足らず余剰勢力が手紙に及ぶといふことが有りうるのかも知れないし
手紙雑談 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
従而したがつて、ユーモラスなこの物語りは、むしろ大衆文学に属するものだが、この小説はとにかくとして一般にこれと種類を同じくする楽しい小説が
長篇小説時評 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
従而したがつて、我々は、対象を限定した以上は、如何ほど意識に忠実であり、対象を追求し、正確に表現しても、意識の角度と通路の外の真実は常に逃してゐるのである。
作家論について (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
従而したがつてこの新鮮な色情を見出した日本の昔の市井人は勝れた粋人であるけれども、粋者の感覚であると同時に、むしろこれはより多く虚無家の感覚でもあつたのだ。
従而したがつて紅庵自身に直接何等の関係はなくとも、単にさういふ事柄のもつ何やら息づまるやうなあくどい情慾の雰囲気だけが已にして彼に好ましかつたのかも知れない。
雨宮紅庵 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
従而したがつて泡をくつて喋ることには案外馴れてゐるのである。いづれ近いうちには、貸す方がすつかり慌ててしまふほど落付払つて殆ど喋らずに金を借りてみようと考へてゐる。
お喋り競争 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
従而したがつて彼の小説の人物は固定された性格を全く与へられてはゐないわけだが、事件から事件へ転々と動かされて行くうちに、いはゆる性格なぞといふケチな概念とかけはなれ
スタンダアルの文体 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
従而したがつてこのアトリヱはアトリヱ本来の面目を果すことが極めて稀れで、専ら主人の不在によつて存在理由も生じるといふ奇妙な役割を果してゐたが、然し一週に三回の午前中
狼園 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
従而したがつて、その夫婦生活がいはば必死で縋り合つてゐるかのやうに親密無二であつたらしい、嘉村氏の死後、その妻女の良人の追想など哀切で、至高の貞女をしのばせるものがあつた。
長篇小説時評 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
従而したがつて、そこの教授は、この土地の最高の知識人と目されてゐる。
従而したがつて彼の人生の設計を深刻化し立体化する必要にせまられる。
牧野さんの死 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)