後添のちぞい)” の例文
五十男が今更後添のちぞいを貰って、『高砂やア』も気が引けるし、そうかと言って、高い身の代金を積んで商売女をれるのも知恵が無い。
宇平の姉りよは細川長門守興建ながとのかみおきたけの奥に勤めていたので、豊島町としまちょうの細川邸から来た。当年二十二歳である。三右衛門の女房は後添のちぞいで、りよと宇平とのためには継母である。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
Hの細君としては、早くもGの後添のちぞいのことを想像に描いてゐたのかも知れない。
夜の鳥 (新字旧仮名) / 神西清(著)
後添のちぞい、後妻、二度目の嫁といっても、何となく古女房のように聞えますが、どうして、間淵と夫婦になった年が、まだ、ほんの十五六。で、ただ一度だけ、その頃、私が、本所で逢った事がある。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
主人峰右衛門の後ろに立って居る、青白い四十女は、それは後添のちぞいのお皆というのでしょう。何やら眼顔で、しきりに主人を牽制して居ります。
後添のちぞいの主人源左衛門は、元は武家で腕に覚えがあるから、私を殺しに来るに違いない——というのだそうで
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「主人の後添のちぞいと、主人の弟が仲が良きゃ、世間の評判になりますよ、口で何んと言ったって、腹の中は犬と猿じゃありませんか、それにあの辰之助というのは喰えそうも無い男で、人位は殺し兼ねませんよ」