幾干いくそ)” の例文
鴫立沢しぎたつさはの夕暮につゑとゞめて一人歎き、一人さまよふ武蔵野に千草の露を踏みしだき、果白河の関越えて幾干いくその山河隔たりし都の方をしのぶの里、おもはくの橋わたり過ぎ
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
法衣ころもの裾を野路の露に染めつゝ、東西に流浪し南北に行きかひて、幾干いくその坂に谷に走り疲れながら猶辛しともせざるものは、心を霊地の霊気にひたし念を浄業の浄味に育みて
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
貪狼巨門たんらうきよもん等北斗の七星を祭りて願ふ永久安護、順に柱の仮轄かりくさびを三ツづゝ打つて脇司わきつかさに打ち緊めさする十兵衞は、幾干いくその苦心も此所まで運べば垢穢きたなきかほにも光の出るほど喜悦よろこびに気の勇み立ち
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
貪狼巨門たんろうきょもん等北斗の七星を祭りて願う永久安護、順に柱の仮轄かりくさびを三ッずつ打って脇司わきつかさに打ちめさする十兵衛は、幾干いくその苦心もここまで運べば垢穢きたなきかおにも光の出るほど喜悦よろこびに気の勇み立ち
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
幾干いくそ罪業つみを作り玉ひし上、浪煙る海原越えて浜千鳥あとは都へ通へども、身は松山に音をのみぞなく/\孤灯に夜雨を聴き寒衾かんきん旧時を夢みつゝ、遂に空くなり玉ひし御事、あまりと申せば御傷おんいたはしく
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)