幻惑げんわく)” の例文
彼にとつては総てが変態であり恐怖であり幻惑げんわくであつた。かれの静かな心にうつつてくるのは、かれの病みつかれた顔や手足にまつはる悩ましい蜘蛛の巣である。
若君わかぎみ若君。これは呂宋兵衛の幻惑げんわくですぞ、かならず、その手に乗って、おひるみあそばすな」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帆村探偵の自信はにわかにグラつきだした。彼は遂に、眼から入ってきた蠅男の姿に、幻惑げんわくされてしまったのである。深い常識のために、推理の力を鈍らせてしまったのである。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ただ、あなたのかおかたちの美しさに幻惑げんわくされて、あなたをだまそうとしているのです。あなたのこころが分るひとは自然のこころの分るひとだけです。自然のこころとは愛です。恵みです。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
いざさらばわれらにたまへ、幻惑げんわく伴天連ばてれん尊者そんじや
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
幻惑げんわくに勞れた焔は
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
最初の幻惑げんわくした印象のごとく、理想の桃源郷やフェアリイランドではなかった——後年彼は友人に手紙を送り、ここもまた我が住むべき里にあらずと言って嘆息たんそくした——けれども